予期せぬ現地入院から自力帰還するまでの長い道のり スタート間もなく体調不良で何度も路上に蹲り、ついにはヴィレン・ラ・ジエルで病院へ搬送、丸二日検査と点滴で過ごして退院した。しかし、自己完結がブルベの基本、いかにしてホテルまで帰るか。1200kmは途中リタイヤとなりはしたが、帰還までにかかった一日半、そこにも多くの出会いと貴重な体験があった。これもまたPBPである。 *レポートはPBPページ作成に当たって、「治療費支払い」「帰還方法」という質問に回答する形で書かれたものです。 |
救急車で病院へ搬送、 気になるのは治療費 |
|
|
翌日無事に退院、 「でも、ここはどこ?」 |
||||||
カウンターで現在位置と交通手段を確認。「駅どこ?」と聞いたのが悪かったか、駅は分かったのですが鉄道は廃線(地図にはある)、営業している駅舎でも今日のバスは終わったことが分かりました。インターマルシェ(スーパー)で腹ごしらえして、ぶらぶらしながら安宿を物色したりしてましたが、あたってくだけろで町から北東方面に向かう広めの道端で、MAPの裏にヴィレン・ラ・ジエルと書いて座ってました。車通りは多いけど15分ほど待ったらトヨタのランクルが止まりました。ドイツの人で夫を車でおいかけてフルサポートしているとのこと。サポートはコース上を走れず、たまたまマイヨンヌを経由して私をひろってくれたわけです。この婦人はPBP公式記録ビデオの冒頭で、旦那をマッサージしている奥さんです。
ヴィレン・ラ・ジエルに着き、そこらを見物。速い人たちがもう到着してきています。民家で電話を借していただきリタイヤを伝え、各国サポートの人と話をしていると、車に載せてくれた人の旦那が到着。出発を見送り、奥さんも出発。PCまでとの依頼だったし、家財一式、犬まで積んだ車に自転車込みで載せてもらえそうもなかったこと、翌日木曜日一日あればなんとかなると、後に残されることにしました。PCの食事を買いましたが、何か食べなきゃと思いつつ不味いミネストローネはともかく、パスタが食べられず残してしまいました。夜になりちょっと寒さが応えたので仮眠所(小学校の教室にマットが並べられて毛布付き、指定時間に起こしてくれる)を利用。 翌朝木曜日よっぽど明るくなってから起きて、パンク修理。
宿舎まで後一息というところで、サクレイの中央広場でフランス国営TVのドラマ、「ローマのエロイーズ(女性刑事?の名前)」のロケに行き会い野次馬をしていたら、ディレクター(これも女性)に「そこの自転車の人!ちょっと来て」と命令されて、大女優クリスティンティッティ女史(地元のティーンの弁)と競演(通行人Aですが)することに。3テイクくらいであっけなく完了。記念撮影いるかといわれて、礼儀上是非と写真に収まる埃まみれの自転車おやぢ。 スタート前の日曜日には休みで利用できなかったサクレイの食料品店で食べ物を仕入れホテルへ到着しました。
|
体調崩した5つの原因 日本出国前から始まっていた |
出国ぎりぎりまで行けるかどうかの綱渡り。妻にも「妻子を置いて遊びに行くだなんて、よよよ(嘘泣き)。」といじめられ、フライト当日の午後に梱包している始末。慌てすぎて、成田まで同乗させてくれる斉藤さんが来る時間を気にしながら、ラックに掛けてある自転車の下で、段ボール箱に入れようと頭を上げたら、チェーンリングでざっくり頭を切った程動揺してました。
敗因その1 後ろ髪をひかれまくりで出発してきたので、パリに着いただけでもう、うれしくて、嬉しくて。喜びすぎて土日の間に数十キロも自転車でうろちょろしてた。 敗因その2 若いときの少ない経験から、時差は寝ないで直すという体力勝負だった。 敗因その3 うれしがって、スタート当日月曜日の午前中にあったプロローグに出たのも裏目。 何を食べてもおいしくて、カーボロードだと身体を偽って食いまくっていた。 敗因その4 もともと、十二指腸潰瘍+胃炎で長年通院していたにもかかわらず、環境の変化、無理・疲労、暴食が祟って、人権体育館での出発待ちの時点で、南アの人やイタリアの人に「sava? 如何っ?」ときかれて「スタマクエク:胃が痛い」と言っている状態でした。 敗因その5 おまけに、スタート前のカーボパーティに徒歩で行ったおかげで、再入場に時間を取られることなく比較的早いグループでスタートできたものの、夜道のミスコースの不安から明るくなるまでは、とオーバーペースで走ってました。 その結果 未明から疲労と胃痛で何度も吐き、道ばたで転がっていていろんな人に声を掛けられましたが(感謝)、昼の暑さと再三のパンクに引導を渡されました。入院して2日の絶食と点滴で収まりました。喉の渇きや胃の痛みは相変わらずでしたが。 |
考えたくはなくても 帰還手段検討は必要 |
現地ではこのリタイヤー鈴木でさえ参加することに興奮していて、走る前からリタイヤのことを考える不吉をきらってか、「リタイヤしたときはそのときさっ」という雰囲気で、互いにそれを話題にすることがありませんでした。それ以前に、未知の1200kmの準備(地図読み、自転車整備、携行品検討、補給計画他)で忙しかったというのが、正確な表現かな。
実際してみて(^_^;)、
おかげで、言葉の重要性が、今なら、よくわかります(^_^;)。観光ガイドや旅行保険のしおりに、旅行中に必要な英語表現なんてのがありますが、「PBPカスタマイズ版、リタイヤ時に便利な表現集。仏日対訳+英語」が作れそうです。リタイヤ時だけでなく、集団走行時にさんざん聞いた「あたんしょーん(気をつけろ!)」とか、自転車各部の名称やら、日常生活(食う、寝る、出す)関連の言葉も集めておけば鉄壁?ですね。 *最後の項のみ2003年PBP終了後に当時の参加者MLに投稿されたものを転載しました。 |